うんちは何を語る?

第二の脳といわれる腸と人の体のかかわりについて、興味本位に書きつづります。

宿便の真実

スッキリしたうんちキャラクター

宿便てなに?

突然ですが、健康やダイエットに関する記事などで「宿便」という文字を目にしたことがある人は多いのでは?

そこには、

「食べ物のカスは小腸にぎっしり生えているの絨毛に引っかかって残留しています。そして、1度引っかかると、後から後からそこへカスが滞留して、腸内の流通を妨げたり、腸の吸収力を弱めてしまいます。この残留物が宿便です。宿便は、ときには数キログラムも溜まっています。宿便は腸壁にこびりついて取れないへドロ状のうんちです。」

とか、

 「宿便は、ただ単に腸内の流通を妨げ、栄養分の吸収を弱めるだけでなく、腸の機能を低下させ、便秘を引き起こしたり、肥満や肌荒れの原因になります。」

といった内容のことが書いてあったはずです。

 

でも、コレッてウソなんですよね!

実は、健康・ダイエット関連でよく用いられる「宿便」は存在しません。

 

小腸の内腔表面で栄養分を吸収する上皮細胞は、新たに供給される細胞によって、絨毛という小突起の頂上まで押し上げられ、頂上に達すると剥がれ落ちます。

小腸の吸収上皮細胞は寿命が最も短い細胞の1つで、1日~1日半サイクルで絨毛から脱落して死滅します。

とても、うんちがこびりつくような暇はないんです。

実際、内視鏡でも、腸壁にこびり付いたうんちは確認できないそうです。

しかし、世の中には今でも、「血液を汚し、消化吸収を妨げ、毒素を発生させ、病気のもとになる」から「宿便を取って、おなかをスッキリ」させよう、などという宿便ネタがあふれています。

そして、エステ療法や腸内洗浄などを勧めたりしています。

ここでもう1度、世間で言われているような宿便は存在しません!

意味のない施術に引っかからないよう注意してください。

 

本当の宿便とは

宿便はウソとお伝えしましたが、実は宿便は存在します。

とはいっても、もちろん、世間一般でいわれているようなものではありません。

宿便とは、数ヶ月以上もの長期間、肛門近くの直腸に居座っているうんちの塊のことです。

便秘でー週間以上も排便がとどこおると、うんちが太く固まって肛門を通過できなくなり、俗に「糞詰まり」といわれる状態になります。

程度が軽ければ、浣腸や坐薬を入れて、うんちの滑りをよくするだけで自力で気張り出せますが、10日以上も経過してしまうと、うんちは握り拳のような大きな塊になり、イキんで出そうとしても出なくなります。

この塊が宿便です。

大腸の真ん中にどっかりと居座って、後からきたうんちが通るのを邪魔します。

後からきた柔らかいうんちは、苦労しながらも宿便の横をすり抜けて、少しずつ排泄されますが、その間にも宿便は雪だるまのように徐々に大きくなって、ついには腸閉塞のような症状を引きおこします。

そうなってから宿便を取り出すには、病院の手術台の上で、ものものしい態勢をとり、頑丈な道具を使う手術を必要とします。

この宿便は、まるで年輪のように何層にもコーティングされ、砕石をセメントで固めたようにカチカチになっているといいますから、手術も一筋縄ではいかないことが想像できるでしょう。

 

便秘で苦しむ腸

怪しい療法にはご注意!

宿便対策や腸内環境改善を謳った民間療法を目にすることがありますが、コレも眉唾物が多いので注意が必要です。

腸内環境をリフレッシュ、などと謳っている腸内洗浄は、肛門から体温程度のぬるい生理食塩水やコーヒーを流し込み、それを排出することで腸の中をスッキリ、リセットできる、と謳ったものですが、実際には、腸内を洗ったところで悪玉菌だけが流れ出ることはありません。

もちろん、腸管を洗浄すれば一時的には腸内細菌(善悪とも)が減少しますが、食事をすれば腸内細菌は再び増殖して元通り、つまり善玉菌とともに悪玉菌も増殖します。

腸管洗浄で腸内細菌をリセットして、そのスキに善玉菌だけを棲ませる、といった荒技は効きません。

それどころか、肛門から大量の水分を入れる、という強い刺激で排泄することに慣れてしまうと、腸の働きがさらに鈍くなって、余計に排便がおこりにくくなる可能性や、注水ノズルで腸の粘膜を傷つけて感染症を起こす危険性すらあります。

特に、海外では、エステコースの一環として、ボディマッサージとセットになっているのを見かけますが、実施しても腸内環境がリセットされることはない、ということを認識しておいてください。

また、ダイエットや宿便対策などと称して宣伝されている断食プチ断食についても、「・・・」です。

それらの名目は、「腸を休ませて腸内環境を整え、毒素を排出しましょう」ということなんですが、腸は自律神経で動く臓器のため、断食しても動きを止めることはありません。

それどころか、腸内環境を良くするためには、むしろ積極的に腸を動かしてあげることが大切です。

物を食べないストレスで、腸内環境が悪化する可能性がありますし、断食によって食べ物を腸に送り込まないと、腸内細菌は腸粘膜を分解し壊してしまう場合もあるんです。

 

もちろん、断食すれば、普段の食事量より食べないことで、摂取カロリーが消費カロリーを下回るため、一時的には体重に多少変化があるかもしれませんが、そのときにも腸は決して休んでいません。

断食をしてもウンチが出ます。

それについて、「宿便が出た」といわれることがありますが、事実は違います。

通常のうんちは、食物の不消化部分、消化液、消化管上皮が剥がれたもの、腸内細菌とその死骸などで構成されており、断食のときには食物の不消化部分がないだけです。

 

カラダが不調のときには、つい何かしらの療法に頼りがちですが、根拠があいまい、あるいは無い健康療法には注意しましょう。

 

『カイテキオリゴ』