うんちは何を語る?

第二の脳といわれる腸と人の体のかかわりについて、興味本位に書きつづります。

腸内細菌VSストレス

帆船

 

突然ですが、歴史の話を少々。

1497年、ポルトガル人のバスコダ・ガマはリスボンを出航し、翌年アフリカ南端の喜望峰を回ってインドのカリカット(現コージコード)に達し、東洋航路を発見しました。

 このとき、多くの船員に、歯茎からの出血や膝から上に広がる黒いアザが発症し、実に船員160人中100名が死んでしまったそうです。

この原因は、ビタミンB、Cの欠乏でした。

ビタミンBの不足で脚気が、ビタミンCの不足で壊血病が起こったのです。

 

動物は本来、ビタミンBやCを食物から摂取しなくても自らの体内で作ることができるのですが、人間はその進化の過程で、この能力を失くしてしまいました

おそらく、新鮮な野菜や果実を食するようになったことで、ビタミンB、Cを体内で合成する必要がなくなったのだろうと考えられています。

ちなみに、人間以外でこれらを体内合成できないのは、猿とモルモットだけだそうです。

 

バスコダ・ガマのクルーたちが病気になったのは、長期間、新鮮な食材を食べなかったことが主な原因とされていますが、近年さらにもう1つ、別の理由が挙げられています。

それは、当時の航海中の食事といえば、缶詰などの保存食ばかりだったため、腸内細菌が不足し、それが病気を招いたということです。

ある研究によると、腸内細菌の餌であるセルロース(炭水化物の一種)を添加することで、腸内細菌によるビタミンB群の合成が増すということが確認されています。

つまり、食物からビタミンを吸収するよりも、腸内細菌によるビタミン合成のほうが重要だということです。

 

腸内細菌が減ってしまう原因は、さまざまな理由が考えられます。

食事環境はもちろんですが、見逃せないのが精神的な理由・・・不安や緊張感からくる心のバランスの喪失です。

このことに関連する興味深い調査結果があります。

それは、1976年にアメリカ航空宇宙局NASA)のホールデマン博士が行った、宇宙飛行士の腸内細菌に関する調査結果です。

この年、NASAは3人の宇宙飛行士を乗せた有人科学実験探査機を打ち上げました。

博士はこの3人の腸内細菌の状態を継続的に調べたのです。

調査の前段として、3人の宇宙飛行士は、当然、肉体面では健康そのものでした。

にも関わらず、極度の不安と緊張する場面では3人に共通して、悪玉菌「バクテロイデス菌」が大量に発生していたそうです。

また、同時代にソ連(現ロシア)でも同様に、宇宙飛行士と腸内細菌の関係を調査していましたが、そちらでは、宇宙飛行士の腸内細菌の数に飛行前から変化が現れ、飛行中にはさらに異常が見られたそうです。

具体的には、クロストリジウムという悪玉菌の増加と、善玉菌であるラクトバチルス菌などの減少が確認されました。

 

日本では、これは宇宙飛行士とは関係ありませんが、阪神淡路大震災の前後に腸内フローラ)の変化について調査が行われました。

震災後に顕著だったのは、うんちの中の悪玉菌(カンジーダ、シュドモナス菌など)の増加で、これは心理的、身体的ストレスが善玉菌を減らし悪玉菌を増やしたと考えられました。

ストレスが腸内フローラに悪影響を及ぼす原因については、当初、ストレスが腸内フローラを変化させるのは、免疫機能抑制や腸管運動の変動を介した、間接的な影響が想定されていました。

しかし最近では、ストレスが腸や腸内細菌に対して直接的に悪影響を与えていることが、さまざまな研究によって明らかになっています。

 

ストレスを抱えて悩む男

 

肉体的あるいは精神的なストレスは今や、人の生活にすっかり同居しています。

自分の人生、何のストレスも感じないという人はおそらく皆無でしょう。

そして、ストレスが、健康はもちろん美容の大敵であることも、知らない人はいないと思います。

ガン・心筋梗塞脳卒中などの生活習慣病をはじめ、うつ・アレルギー疾患など現代社会で急増している症状にも、ストレスの悪影響が指摘されています。

事実、ストレスがありとあらゆる病気の原因となり、多くの臓器に悪影響を及ぼしていることが、世界中の多くの研究者によって証明されてきました。

 

ここで改めて・・・ストレスはどこで感じるのでしょうか?

答えはです。

そして、ストレスの影響を最も受けやすい臓器はです。

 

脳と腸は、人体の「上」と「下」に位置していて、一見すると縁遠いですが、実はとても密接した関係にあります。

脳と腸は、脊髄と自律神経を通じてダイレクトに繋がっており、脳の情報は瞬時に腸管粘膜に存在する神経細胞に伝達されます

なので、脳がストレスを感じるとすぐさま腸も反応するのです。

緊張してお腹が痛くなった・・・、テスト前に便秘や下痢をした・・・、面接のときに急にお腹が鳴った・・・などは、多くの人が経験したことがあるのでは。。。

 

人体で、腸ほど神経細胞の数が多い臓器は他にありません。

もっと言うと、単に「多い」だけでなく、腸には神経細胞が「網の目のように張り巡らされている」と言っても過言ではありません。

それゆえに腸は「第二の脳」とか「考える臓器」と称されるのです。

 

最近では、「イライラしていた・・・」「ムカついた・・・」「キレた・・・」などが原因のトラブルや犯罪が多発していますが、これらの原因の一端は腸内フローラの乱れが関係しているかもしれません。

生活環境や食生活が乱れて、腸がバランスを崩せば、ビタミン合成が上手くいかずに不足することが考えられます。

多くのビタミンは、脳内伝達物質の合成にも関わっており、ビタミンがなければ脳は円滑な働きができません。

つまり、「イライラする」「怒りっぽい」人は、必ずしも性格に原因があるわけではなく、腸に問題がある可能性があるのです。

そういった人は、腸内環境を整えて腸内細菌が増殖すれば、つまらないことでイラついたりキレたりすることがなくなるのかもしれません。

 

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