うんちは何を語る?

第二の脳といわれる腸と人の体のかかわりについて、興味本位に書きつづります。

便秘と下剤の関係

トイレで便秘に苦しむ人

人の免疫は腸内細菌のバランス、つまり腸内環境によって左右されています。

そして、腸内環境の良し悪しを判断する大切な要素の1つがうんちです。

うんちそのものの状態はもちろんですが、便秘や下痢といった排泄状態にも多くの情報が詰まっているんです。

 

 

便秘の診断基準

便秘と一言でいても、排泄の状態には個人差があるので、客観的な定義は難しいようです。

うんちの回数や量は、同一人物でも食事内容によって変わりますし、排便回数も普通は1日1回ですが、正常範囲は広く、一般には1週間に3回以上ともいわれています。

医学上の国際的な便秘診断基準でも、一過性の症状と区別するため、6ヶ月から少なくとも3ヶ月は状態を見ることを便秘の診断の定義にしており、しかも自覚症状を中心とした基準となっているくらいなので、やはり一概に判断できないということなんでしょう。

一応、医学的な便秘の診断基準を挙げてみると、

  • 排便4回に1回以上で、力まないと便が出ない。
  • 排便4回に1回以上で、硬い便や塊となった便が出る。
  • 排便4回に1回以上で、残便感がある。
  • 排便4回に1回以上で、肛門が塞がったような感覚がある。
  • 排便4回に1回以上で、排便を容易にするために手を使う(用手排便、骨盤底支持など)。
  • 排便が週に3回未満。

となり、上記基準の2つ以上に当てはまると便秘とされます。

その他、下剤を飲用しない限りめったに軟便にならない場合も便秘と判断できるようです。

さらに、過敏性腸症候群IBS)の診断基準を満たさないことも条件です。(同様の症状があっても、IBSはまったく別の病気です。)

 

便秘と判断されれば何かしらの治療が必要ですが、もし、1週問に1回しか排便がないとしても、本人にまったく苦痛がなく、日常生活に何の支障もないなら、治療の必要はないといわれています。

 

便秘の種類

便秘は大別すると、大腸がんのような器質性便秘機能性便秘があります。

器質性というのは、症状や疾患が臓器・組織の形態的異常に基づいて生じている状態です。

一方、機能性というのは、臓器などが本来持っている働きに異常が生じている状態です。

そして、一般的にいわれる「便秘」は、機能性便秘を指しています。

機能性便秘はさらに、痙攣(けいれん)性便秘、弛緩性便秘、直腸性便秘に分かれます。

 

痙攣性便秘は、ストレスなどによる自律神経の乱れが腸を痙攣させて、大腸の「蠕動(ぜんどう)運動」に支障が出ることによって起こります。

例えば、修学旅行のときなどに発生する便秘はこのパターンが多いです。

特徴として、便秘と下痢を繰り返すことが多いです。

弛緩性便秘は、大腸の蠕動運動の低下によるもので、高齢者や寝たきりの人に多く見られる便秘です。

うんちが大腸内に滞留する時間が長いので水分が吸収され過ぎるため、硬くて太いうんちになるという特徴があリます。

直腸性便秘は、直腸へ便が入ってきても便意が起こらず、排便反射が弱っている状態です。いつも便意を我慢したり、便秘薬・浣腸の乱用、朝食抜きの食生活を続けている人に多く見られるそうです。

硬いうんちを分割して排便するという特徴があります。

 

下剤の種類と効果

便秘の治療には、主として下剤が使われます。

下剤は、腸管の蠕動運動を促進させ腸の内容物を押し進めたり、うんちを軟らかくしたり、うんちに水分を吸収させて体積を増やす働きをします。

さらに、下剤は便秘治療だけでなく、食中毒や薬物中毒、あるいは胃腸のエックス線検査(俗にいうバリウムってやつです)後などに、腸の内容物をなるべく完全に排泄させるといった目的にも用いられています。

 

いろいろな下剤

 

下剤の種類について簡単に触れると、大きく分けて、機械的下剤刺激性下剤の2種類があります。

機械的下剤とは、分量が減り硬くなってしまったうんちに対し、水分を増加させることで、軟らかくして排出させるタイプの下剤です。

もう一方の刺激性下剤は、腸壁や腸の神経を直接刺激して、腸の蠕動運動を促進して排便を促すタイプの下剤です。

市販されている便秘薬のほとんどはこのタイプです。

特徴としては、蠕動運動に伴ってお腹が痛くなることがあるということと、初めはよく効くのですが、やがて効かなくなってくるということです。

薬に慣れてくると、逆に頑固な便秘になってしまう可能性があるといいますから、素人判断で1週間以上服用することは避けましょう。

 

便秘を防ぐ生活

便秘の場合には、治療が必要であることは前述した通りですが、やはり普段から便秘にならない生活スタイルを心がけたいものです。

具体的には、毎日適度な運動と十分な睡眠を取り、決まったトイレタイムをつくります。

人の体は素直なので、同じ生活リズムを繰り返すことによって、毎日のトイレタイムに排便できるようになります。

排便を促す「大腸の蠕動運動」は、とくに朝に起きやすいです。朝食を摂ることでスイッチが入り大腸が動き出し、直腸・肛門へとうんちを押し進めます。

なので、便秘予防には、朝食+朝のトイレタイムは、理想の生活リズムなんです。

 

また、便秘にはストレスも大敵です。

日頃から、休息や気分転換を図り、ストレスを溜めないことも必要です。

 

それから、実はこれが最も気をつけたいことなんですが、食事内容に注意しましょう。食物繊維や緑黄色野菜を多く摂ることを心がけます。

食物繊維が少ないと、ウンチの体積が小さくなり、大腸に刺激を与えられません。

加えて、腸内の善玉菌が活性化するように、乳酸菌飲料・食品やオリゴ糖を多く含む食品も摂りましょう。

腸内環境を整えて、過食・偏食・間食・冷食・不規則食を避け、毎日規則正しく、リズムカルに生活することが、便秘の改善・予防の特効薬だといえるでしょう。

 

便秘とダイエット

本来、健康的に痩せるためには体脂肪を少しずつ減らすことが必要です。

ところが世間一般では、ダイエットというと体重減少が基準になる傾向があります。

 

人の体は、重量比でみると、体の重さの約60%が水分です。

つまり、体内の水分が減れば、見かけの体重が減るということです。

そこで、うんちやおしっこを排出させて、痩せた気にさせるダイエットサプリメントが登場するのです。

そういったサプリメントの主成分は、簡単な言い方をすれば下剤や利尿剤ですから、本質的には痩せませんし、健康な人が乱用すれば、体を壊す可能性すらあります。

ダイエットサプリに限らず、痩身願望の女性には下剤乱用者が多いといわれています。が、下剤の使用を申告しなかったり、強く否定したりして実情を把握するのか難しい状況だそうです。

下剤を使って排泄すると、次の便通までに腸の内容物が溜まるまでに数日かかることもあるのに、便意がないことを便秘だと誤解して、下剤の使用量を増やしたり、より強力な下剤を使ったりして、さまざまな健康被害を受けている人がいます。

また、体を壊すまでいかなくても、薬に頼らないと排便できない体=下剤依存症になってしまったり、腸が正常に働かなくなってしまいますので、安易な下剤使用には注意が必要です。