うんちは何を語る?

第二の脳といわれる腸と人の体のかかわりについて、興味本位に書きつづります。

小腸がんて、聞いたことある?

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小腸には病気がない?!

胃で消化された食べ物を消化・吸収し、残りものを大腸へと送る働きを持つ小腸ですが、実は身体の中で一番病気になりにくい臓器と呼ばれています。

なぜ小腸には病気がほとんどないのか?というと、小腸には病原菌が長居できないからなんです。

 

どういうことかというと、小腸の1番内側、胃から送られてきた内容物に直接触れる粘膜は、病原菌が張り付つくとスグに剥がれて一緒に流されてしまうので、菌が留まって棲みつこうにも不可能なんです。

小腸の粘膜はほぼ3日に1回入れ替わり、これは、臓器の中で1番早い新陳代謝サイクルです。これを繰り返すために、腫瘍などが悪化して身体を蝕む前に、粘膜が入れ替わってしまいます。

そのため「小腸がん」は、めったに起こらないんです。

常に新しい粘膜が古い粘膜をはがすことで、病原菌が身体の奥深くに入り込むのを防いでいるんですね。

※ただし実際には、腸結核クローン病といった病気になることはあるそうです。

 

その上、小腸には、病原菌をやっつけてくれる切り札リンパ球が、消化器官の中で最も集中しています。

小腸の腸壁には、小腸独特のリンパが集まった節(パイエル板)があり、その下にはさらに「腸間膜リンパ節」があります。

難しいことは省きますが、「リンパ節」とは身体に異物が入ってきたら、それをくい止めるバリケードで、リンパ球たちが病原菌に対峙するために待機している場所です。

 

要するに、小腸には、粘膜の入れ替わりが早くて病原菌が滞在できない上、病原菌をやっつける兵隊たちがうようよ待ち構えているのです。

だから、小腸は最も病気になりにくい臓器なんです。

 

さらに、小腸は他の臓器に比べ、柔軟性を備えているという特徴もあります。

柔軟性といっても、硬い・柔らかいということではなく、対応力が高いということ。

たとえば、仮に脳や肺を切除したときに、他の臓器を移植しても、当然ながら脳や肺と同じ働きをすることはありません。

が、小腸は、胃がんなどで胃を切除したのち小腸を食道と縫合すると、もともと胃があった箇所の小腸は、やがて膨らみ胃の形に近づこうとします。

そして、胃と同様、消化の役割を担うようにまでなります。

他の臓器の肩代わりまでしてしまうなんて、かなり神秘的な存在ですよね。

 

大腸はうんち製造機 

胃から移動してきた食物の栄養分をほとんど吸収し、病原菌が入ってきても定着させず、いつもクリーンな小腸からの残りカスや、小腸から剥がれた粘膜などがたどり着くのが大腸です。

大腸には、小腸にみられるような絨毛や突起はなく、表面は比較的なめらかで、その形状は、小腸の外側部分をぐるっと回っているような状態で腹部に収まっており、肛門の直前まで続いています。

大腸の表面積は小腸の半分ほどで、部位別に盲腸・結腸・直腸の3つに分けられます。ただ、盲腸は実質退化しているので、主に働いているのは、上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸という4種類の結腸です。

上行、横行、下行という名の通り、結腸はお腹の中を、

上向き→横向き→下向き→S字の形

の順にぐるりと一周し、その先は直腸・肛門へと続いています。

 

小腸と大腸の関係イメージ画

 

実は、大腸が固定されているのは1ケ所だけ。

あとはブラブラと振り子のようにぶらさがった状態のまま、柔軟な動きで、水分を吸収しながら小腸で消化しきれなかった内容物をさらに分解・吸収しています。

食べ物の残りカスや腸粘膜、腸内細菌などからうんちを形成していくと同時に、有害なミネラルや老廃物も体外に排出します。

 

小腸からやってくる残りカスなどの内容物は流動体ですが、上行結腸・横行結腸・下行結腸と進むにつれて半流動体から半固形状態へとじわじわ固まっていきます。

これは、内容物が大腸内を進む過程で、水分が吸収されるからです。そして、この通過時の水分の吸収具合によって便の固まり具合が決まるのです。

ちなみに、大腸で十分に水分を吸収しないまま通過すると下痢に、逆に大腸の通過が遅く、排泄までの時間がかかるとカチカチの便になります。

 

できあがったうんちは結腸の中で一番大きいS状結腸に溜められ、その一部が直腸までたどり着き、肛門から排泄されるのです。

 

 

大腸は病気の巣?!

小腸はクリーンで病気になりにくいと前述しましたが、では反対に人の臓器の中で最も病気が発生しやすいのはどこか?というと、それは大腸です。

  

大腸の大事な役割として、「腸内細菌」を棲まわせて共生関係を築いていることがあります。

大腸の中だけで1000種以上、600兆個以上もの腸内細菌が棲みついており、実はこの腸内細菌は、免疫とも深い関係を持っています。

自分のお腹の中に600兆個以上も細菌がいて、さらに、腸内の「お花畑(フローラ)」には、自分さえ知らない外敵との戦いや勢力争いが繰り広げられ、健康や病気のカギを握っているなんて、なんとも不思議ですよね。

 

繰り返しになりますが、大腸は、さまざまな腸内細菌が棲み免疫力に強い影響を及ぼしながらも、ストレスなど精神的な要因で弱りやすく、病気になってもサインが見つかりにくい、云わばやっかいな臓器です。

大腸の中は、光が届かず酸素もなく、窒素ガス、炭酸ガス、水素ガス、メタンガスなどがたちこめた、云わば暗黒世界です。

とくに、腸壁の内側、結腸の内部は、食物に混じって体内に取り込まれた多くの細菌が作り出す、有害物質が繁殖しやすいところです。

悪い言い方をすれば、「病気のデパート」とも呼ばれる大腸。どんなに健康な人でも、体内では毎日3000~4000個のがん細胞が誕生しているといわれ、そのほんどが大腸で発生しているそうです。

この、発生がん細胞は、常に免疫によって排除され続けています。

逆に言うと、病原菌を抑え込んでくれる腸内細菌の活動や免疫の防御力が弱まると、体に良くない細菌が増殖して、病原性の細菌毒素やがんを促進する物質、あるいは化学性の発がん物質などがはびこって、さまざまな病気の原因を作り出されてしまうんです。

 

以上のように、病気が起こりにくい臓器ナンバーワン...ほぼ無菌状態の小腸と、病気が起こりやすい臓器ナンバーワン...600兆個以上の菌がいる大腸が隣どうし直結していることは、ある意味とても不思議なことです。

と同時に、病気の巣であるはずの大腸が、体全体の免疫に多大な影響をもっているということもまた、不思議かつ神秘的なことだと思います。

 

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