うんちのロマン
うんちはロマンを語る?!
突然ですが、化石と聞いてどんなものを思い出しますか?
大きなものでは、恐竜の骨格やマンモスの牙、比較的身近なものなら貝殻や植物の葉っぱなどをが思い浮かべる人が多いかもしれませんね。
よほど専門的に研究している人でなければ、間違っても「うんちの化石」を思いつくことはないでしょう。
それどころか、そんな化石は聞いたことがない、という声が聞こえてきそうです。
ですが、うんちの化石って案外見つかっていいて、これが太古の生き物を調べるうえでとても重要な役割を果たしています。
そもそも化石とは、過去の生物の遺骸や生活の痕跡が、地層の中に保存されたものです。
ただし、どんなものでも化石になる(なれる)わけではありません。化石が出来上がるためには、いくつかの条件が揃うことが必要なんです。
その条件とは、
- 生存(存在)していた数が多かったこと
- 遺骸が急速に埋まって腐食・分解されなかったこと
- 骨、歯、殻などの硬い組織をもっていたこと
- 風化や侵食による破壊を免れたこと
などです。
ですから、化石というのは、発掘したからといって、どこからでも出てくるというわけではありません。
そして、見つかるとしても、筋肉などの部分はどうしても分解されてしまいますから、骨や歯、あるいは貝殻などが多いというわけです。
となると、うんちは・・・?と疑問が生じますよね。
基本的には、うんちは分解されやすいものなので、あまり化石化しません。
が、きっといろいろな条件が複合的に作用したために出来たのでしょう。。。化石になったうんちもいくつも発見されています。
このうんちの化石からわかることは何か、というとそれは、うんちになる前のもの、つまり食物です。
例えば、恐竜のうんちの化石からは、その恐竜が何を食べていたのか、ということが分かるわけです。
専門的なことは判りませんが、いくら完璧な全身骨格が発掘されても、それだけではその恐竜が何を食べていたのかを知るのはたいへん難しいことでしょう。
そこに、うんちの化石が加わると、食に関する手がかりがたくさん見つかり、さまざまな情報が得られるんですね。
ちょっと洒落た言い方をすれば、うんちの化石は、太古から現代への手紙のようなものなんです(笑)。
生き物の食物中の硬いものは、消化器官を通過してもそのままうんちになって排泄されることが少なくありません。
具体例としては、骨や魚の鱗、それから植物の花粉なども消化されずらいようです。
なので、化石発掘の現場では、数10cmくらいの塊の中に、これらのようなものが見つかった場合は、その塊についてうんちの化石である可能性を考えるそうです。
実際に、うんち化石の研究プラス他の研究の組み合わせによって、かなり詳細なことが判別されてきました。
草食恐竜の生態も一例で、草食恐竜たちは、今でいうイチョウやソテツなどの仲間である裸子(らし)植物を食べていたようです。
裸子植物 とは、種子植物のうち胚珠がむきだしになっているものを指す。ソテツ類、イチョウ類、マツ類、グネツム類を含む。 裸子植物が単系統であるか側系統であるかについては、分子系統学が発達した今日でも両方の立場があり、答えが出ていない。(Wikipediaより)
そして、この裸子植物は徐々に進化して、花をつける被子(ひし)植物という植物が生まれました。
その後、被子植物は裸子植物にとってかわって条件のよいところに生育し始め、裸子植物は高地や寒冷地など条件の厳しいところに追いやられてしまいました。
ある研究では、一般の草食恐竜は被子植物を食べられなかったために、裸子植物を追って厳しいエリアに移動したために、ある種の恐竜は衰退の道をたどっていった、と言われているのです。
恐竜絶滅説は、隕石落下説を筆頭にとてもたくさんありますが、この説もその内の1つに数えられており、もし本当なら、可憐な花が原因で巨大な恐竜が追いやられていったという、なんとも不思議な歴史が成り立ちます。
そうなれば、うんちの化石によって太古のロマンが語られた、ということができるかもしれません(笑)。
うんちが語る人類文明
化石だけでなく遺跡の発掘調査でも、うんちが発見されます。
うんちを調べて、何がわかるのか、といえば、化石の場合と同じく古代の人々が何を食べていたのか、その食生活がわかります。
人の食生活の研究というと、例えば、古文書のような記録を調べたり、住居群の遺跡から発見きれる穀物類や植物の種子や動物の骨などを調べる手法が主流ですが、それらに加えて現在では、排泄物。。。うんちが注目を集めています。
具体的には、遺跡の中からトイレの跡を探しだすことが、うんち研究の第一歩です。
トイレ跡を判別する方法にはいろいろあるそうですが、1つは出土品に注目する方法です。
遺跡の発掘品にちゅう木(ちゅうは竹かんむりに壽)とよばれる薄く細長い板があり、これはお尻拭き、つまり今でいうところのトイレットぺーパーの役割をするふき取り用のへらだったと考えられているものです。
なので、これが出てきた箇所はトイレの跡だと孝えてられているんですね。
トイレ跡が見つかったら、次にトイレの中を調べます。
穴の中の土や桶の木材片などを細かく見ていくと、中からいろいろなものが出てくるそうです。
例えば、花粉や未消化の木の実などが見つかれば、被子植物などを食していたという推測が成り立ちます。また、中には薬効がある植物もあり、食料としてだけでなく、薬として食べたのではないかという推測もできるそうです。
それから、寄生虫の卵もたくさん見つかっています。
それは回虫、鞭虫、肝吸虫、横川吸虫、日本海裂頭条虫(いわゆるサナダムシ)など、かなりの種類が発見されています。
寄生虫というのは、野菜に寄生するもの、魚類に寄生するものなど、その種類によって感染源が決まっているので、発見された寄生虫によって、何をどのように食べていたかがわかるといいます。
いずれにしても、寄生虫がいたということは、食材を生あるいはそれほど火を通さないで食べていたということは想像できますね。
さらに、トイレ跡の土壌調査を行い、脂肪酸分析を用いることで、土の中に含まれているコプロスタノールとコレステロールの割合を調べます。
すると、そのトイレを使っていた人の性別までわかるといいますから、驚きですよね?!
コプロスタノールとは、腸内で乳酸菌などによりコレステロールが分解されてできる物質で、このコプロスタノールの量がコレステロールの4.3倍なら男性、2.8倍なら女性だそうです←私には、科学的な根拠はまったくわかりませんが。。。(苦笑)
なので、うんちから・・・正確にはトイレ跡から、というべきかもしれませんが、男女共同トイレだったか、それとも分けていたのか、といったライフスタイルに関することまで判明するわけです。
以上のように、うんちやトイレに秘められた古代からのメッセージを解読するためには、歴史はもちろん医学、科学など幅広い分野の専門家の力が必要です。
現代そして未来において、各分野でいろいろな見識や技術が発展して、うんちの研究が進めば進むほど、もっともっと昔の人々の生活様式が、生々しく判別されるようになることを想像すると、これまたロマンチックな感じがしませんか(笑)。