人間は草食動物なのか?
人体は植物を食べるようにできている、という説があります。
故・島田彰夫氏(元宮崎大学名誉教授)の学説によれば、「消化酵素を調べると人の食性は植物食である」、「人は猿から進化したが、その進化の過程をみても、人は植物食になる」とされています。
さらに、日本大学の小沢友紀雄教授のチームによる調査でも興味深い結果が見られます。
この調査は、中国北西部の新疆ウイグル地区に住む民族について行われたのですが、この地域に生活する民族の中で、農耕生活を中心にしているウイグル族は、世界でも有数の長寿部族である一方で、同じ新疆ウイグルの中で牧畜生活を営んでいるカザフ族は短命者が多いのです。
研究チームが両者の食生活を調べたところ、ウイグル族は菜食中心であるのに対して、カザフ族は毎食のようにヤギのミルクにお茶を入れ、それに塩を加えて飲んでいたそうです。
早い話が、動物性タンパク質を頻繁に摂取している方が短命という結果が出たわけです。
つまり、ちょっと難しい言い回しになりますが、生物の個体には遺伝情報がすべて含まれている一方で、生物は環境からさまざまな外的影響を受け、ときには損傷を被り、その修復を繰り返しながら生きています。
その過程で、生物は自らの遺伝子の中に、あらゆる損傷に対抗する「治癒力の情報」を蓄積してきました。
その「治癒力」の情報を、人は植物性食品を通して得てきた、と想像できるわけです。
そこから導き出せること、それは食生活を植物を中心にしたほうが、自然に逆らわないということです。
私自信は、べジタリアン的な食生活をまったく支持していませんし、体を鍛える(筋肉を付ける)ため、あるいはアクティブに生活するためには動物性タンパク質・・・つまり肉を食べることはとても大切なことだと考えています。
が、改めて「人類はごく最近まで、もっぱら植物を食べていたのではないか」という学説を読むと、やはり考えさせられますね。
それに、よく考えてみると、日本人の食事は本来、植物中心だったはずです。
昔はそれが当たり前だったのですが、時代の変化とともに、欧米の食材や食文化が持ち込まれるようになり、良い意味でも悪い意味でも、あっという間に食生活の欧米化が定着してしまいました。
「当たり前の良さ」に気づかず、新しいものに席巻されてしまったんです。
「美味しいものは脂肪と糖でできている」・・・これは、とある飲料のCMコピーですが、これほど的を得ている言葉はないと感心するほど、肉食や揚げ物、あるいはファストフードって美味しいですよね(笑)。
ところが皮肉なことに、高カロリー・高脂質の「本家」である米国では、健康食として日本食ブームが起こり、いまやそれが世界に波及するほど、日本食の評価は高まりました。
極端な言い方をするなら、今の日本人(とくに若い世代)は米国人以上に米国的な食生活を送っているのかもしれません(苦笑)。
米国で日本食が評価される背景にあるのは、偏った食生活が招いた肥満や高血圧などによる生活習慣病の増加です。
最近では、「昔、日本人が食べていた食生活を見習おう」という運動まで起きているといいますから驚きです。
具体例として、NCI(米国立がん研究所)が作った「デザイナーフーズ・ピラミッド」があります。
NCIは、さまざまな疫学調査を行ない、植物性食品が癌細胞を抑制することを発見し、どのような植物性食品の成分を取り入れれば癌の発生を未然に防ぐことが出来るのかを調べ、癌予防効果の高い食品40種類を、効果の高い順にピラミッドに表しました。
そのピラミッドの頂点には、ニンニク、キヤべツ、大豆、ショウガ、ニンジンなどが並んでおり、これらの食品はいずれも「フィトケミカル」を含みます。
フィトケミカル(英: phytochemical)は、植物中に存在する天然の化学物質であるとされる。
一般的に、「通常の身体機能維持には必要とされないが、健康によい影響を与えるかもしれない植物由来の化学物」を意味する用語として使用されている。このため植物栄養素(英:phytonutrient)とも呼ばれる。 Wikipediaより
フィトケミカルに共通する特性は、抗酸化作用です。
発癌性物質は、体内で強い酸化力を持つ活性酸素を生成していますが、フィトケミカルはこの活性酸素を弱める働きを持っているのです。
さらに、フィトケミカルと称される植物性食品は、腸内細菌を整える効果も持っていると考えられています。
つまり、フィトケミカルを積極的に摂取することで、腸内フローラが整い健康体になり、腸内で幸せ物質を作る機能が高められて、精神的にも健全になれるということなんです。
おまけに、うんちのにおいも抑えられるし・・・。
そういったことを考えると、菜食主義もまんざら悪くない???