腸内フローラは十人十色
人に個性があると同様に、腸内フローラにも個性があります。
さらに、人の個性はそう簡単には変わりませんが、腸内フローラは変化します。
実際の腸内フローラの研究では、様々な年代の人たちのうんちを観察することで、全体的・平均的な傾向をつかんでいますが、実は一人ひとりを詳しく調べると、当然ですが、千差万別の個人差があるそうです。
たとえば、年齢や性別によって生息する腸内細菌の種類や比率が異なるのはもちろん、同性・同年代の人でも、ビフィズス菌が非常に多い人もいれば、少ない人もいたり、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の腸内比率だって人それぞれ、だということです。
要は、食事の内容や日頃のストレス、健康状態、生活環境などによってどうにでも変化するということなんです。
ちなみに、下のグラフは理研の光岡先生が研究された世代による腸内細菌数を表したものです。難しいことは分かりませんが、生まれてから離乳する時期、あるいは老年に差し掛かると状態が大きく変化することが見て取れますね。
腸内フローラへの食事の影響
まず、食事と腸内細菌の関係についてですが、これには様々なデータがあります。
専門的な詳細はともかく、肉類(動物性タンパク質)の過剰な摂取が悪玉菌を増やす原因になるケースが多いといわれています。
実際、トラやオオカミのような肉食獣の腸内には、ウェルシュ菌などの悪玉菌が多く棲息しています。
これに対して、人やサル、その他ブタ、トリ、ネズミなどの雑食動物は、どれも日和見菌と善玉菌が優勢フローラを形成しています。
肉食獣とは食性が違う人間の腸にとって、動物性食品の摂りすぎが決して好ましいものでないことは、いわば自然の摂理なんですね。
ストレスの影響
ストレスが腸内環境に与える影響について興味深い調査結果がありました。
自衛隊のレンジャー部隊で働く人たちの腸内フローラを、訓練の前後において調べたところ、訓練を受ける前は一般の人と変わらない健康的な状態だったにもかかわらず、訓練を終えた2週間後にもう一度調査したところ、老人並に悪玉菌優位の腸内フローラに変化していたそうです。
結論として、ハードな訓練によるストレスによって腸内環境が急激に悪化したという考察がなされていました。
屈強な隊員たちのお腹の中が老人並みになってしまうなんて、ちょっと意外ですよね。
もちろん、自衛隊の訓練ほど過酷でなくても、何かしらのストレスが腸内フローラに与える影響は少なくありません。
日常生活で、ちょっとした緊張や嫌なこと...つまりストレスで、お腹の具合が悪くなったことがある人は少なくないと思います←わたしももちろん・・・苦笑。
そういったことからストレスとお腹には深い関係があることはイメージできますよね。
病気と腸内環境の関係
胃腸の病気に関するある研究では、大腸ガン患者(44例)と胃ガン患者(39例)、そしてガンにかかっていない一般の健常人(54例)の腸内フローラを観察したところ、その人が患っている病気の種類によって腸内フローラの内容が大きく異なることが確認されたそうです。
健常者と比較した場合、大腸ガン患者はユウバクテリウム、バクテロイデスなどの日和見菌の数が、胃ガン患者はウェルシュ菌や腸球菌など悪玉菌の数が多い傾向にあったり、胃ガン患者の場合には、ビフィズス菌(善玉菌)やバクテロイデス(日和見菌)の数が少なく、ブドウ球菌や緑膿菌(悪玉菌)も多く検出されています。
また、さらなる調査によれば、大腸ガンについてはガンが発症した結腸の部位によって菌の種類や菌数に違いが見られたり、潰瘍性大腸炎やクローン病などの場合には、日和見菌が減少し、大腸菌などが増加する傾向にあることもわかっています。
現時点では、こうしたガン患者の腸内フローラが病気の結果なのか、はたまたそれ自体がそれぞれの部位のガンの発症原因であるのか、までは解明されていませんが、今後も患者一人ひとりのうんちを観察し研究を進めることで、将来は腸内フローラの状態からガンなどの病気を予知できるようになるかもしれません。